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2006年5月30日 (火)

憧れと苦い思い出の革トランク

革トランクに憧れて、憧れて、遂に手を伸ばして…そして夢破れた、苦い思い出がある。

●一人旅の象徴、革トランク

十代なかばの頃、わたしはひとり旅に憧れていた。そして、そのひとり旅に欠かせぬもの、それが革トランクだった。
革トランクは、少女マンガの中で、田舎の町に不意に訪れ、ちょっとした事件を巻き起こし、通り過ぎていく、そんな旅人の持ち物。
ハリウッド映画の中の、トレンチコートの襟を立てた、粋でダンディな主人公の手に提げられていたもの。

使うほどに、革がいい色に味わいを出して、ちょっとした傷がまた、持ち主との年月を語る、そんな革トランク。それがどうしてもほしかった。
わたしには似合うと、密かに自信も持っていた。トレンチコートを着ていれば、必ず男と見間違えられるわたしにはよく似合うはず。

あの頃、わたしはひとり旅気分を味わいに、東京寄りの横浜にある我が家から、鎌倉までの日帰り旅行にしばしば出かけていた。その旅行に革トランクを持って、さらにひとり旅気分を盛り上げよう…そう思った。

●虎の子の3万円を握って、いざ、革トランクを買いに

遂に購入を決意したわたしは、その日3万円を握って出かけた。貯金魔のわたしが、決意して、銀行から下ろしてきた、大事な、大事なお金

行先は原宿。
いまはなきパレフランスが建った年の原宿にはたくさんのアンティークショップがあり、その店の中で革トランクを見かけていたからだ。

この日わたしは鞄を持たずに出かけた。帰りは革トランクに荷物を入れて帰るのだから、余計な鞄は持たないほうがいい。そう思ったのだ。
握り締めているのは小銭入れと本1冊。虎の子の3万円はしっかりと本と本のカバーの間にはさんである。

●思ったとおりの革トランクが、使いたいサイズの革トランクが…ない!

原宿駅からすぐのビルの3階のアンティークショップへ。ここに革トランクがあると記憶して出かけたのに…ない。
ここから予定が狂った。あちらの店、こちらの店と見て回る。

しかし、わたしのイメージしていたアンティークの粋な、いい飴色になった、思い通りのサイズの革トランクはなかなかない。
色はこれぞと思えるものはあったが、どう考えても、わたしが日帰り旅行に持っていくには合わない大きさ。
思っていたサイズの、思っていたような革トランクは どこにもない
わたしにちょうどいいサイズのトランクをひとつ見つけたが、それは紙製のおもちゃのようなアーミーグリーンのトランク。長く使い込んでいける代物ではない。

さんざん悩んで、 疲れて、喫茶店に入り、ほっと一息つく。
お茶を飲みながら考える。考えて、考えて…あのアーミーグリーンの紙のトランクか、それとも大きすぎる革トランクか…。

●お金が…ない!

心決まらぬまま、喫茶店を出て、店への階段を登りながら、本からお金を取り出そうとすると……ない! 貴重な、貴重な3万円がない!
あわてて喫茶店に戻る。トイレを探す。
だが…ない。
お財布ならいざ知らず、まんまのお札。誰が拾って届けてくれよう。

傷心を抱えて帰宅。

「革のトランクはわたしには縁がなかったんだ」と自分を納得させ、1週間後、数千円なりのアーミーグリーンの紙製のトランクを買いに出かけた。
紙製のトランクはしょぼかったけど、数年間に渡り、わたしの旅人気分のお供をしてくれた。

●憧れの革トランクとの再会

それからさらに長い年月が過ぎ、革トランクに憧れたことさえ忘れていた先日、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ) A8.net で、「匠の革トランク 」という文字が目に飛び込んできた。
リンクをクリックして、サイト、「匠の革トランク 」へ行くと、「宮内庁御用職人謹製革鞄、 『匠の革トランク』 の紹介とオリジナルトランク別注でお仕立てするサイトです。 」と書いてある。

そして、まさにあの頃憧れた、あのいい飴色の革トランクの写真がずらり。
左上の写真は、匠の作業場に置いてある、40年物の現役トランク。
わたしが原宿を歩いたあの数年前に生まれたトランクだ。

この店なら サイズに悩むこともない、好みの革を選び、把手も内装のポケットのデザインも選べる、特注品がある。

いや、いや、そんな贅沢を言わなくても、既成の中型トランクは、まさにあのときほしかったサイズと色だ。既成と言っても、注文すると、 わたしのためにそれから作る品。

ああ、だけど、いま、このトランクを持って旅に出る予定はない…そう、いまは旅と言えば、ハンドバッグひとつで出かける日帰り出張か、実用的な軽い鞄にぎっしり荷物を詰めて、夫に持ってもらっていく近場の旅行だけ。こんな重くて、角ばった鞄を持っていくと言ったら、夫に怒られる。

だから買えば、ただの飾りになることはわかりきっている。
…でも…ほしい。あのときの悔しさを、涙を飲んで、あきらめた革トランクを、 ただ、自分のものにしてみたい。

この気になるお店はこちら=>「匠の革トランク

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